歩いて日本一周ブログ

歩いて日本一周する記録とか雑記

尾道

面倒な朝

昨日の夕方、変な風が吹いたので天気が荒れるかと思ったが、雨は降らなかったようだ。

台風が近づいているのは確かなので、気をつけたい。

 

とても硬いきのこをナイフで切断すると、それが触覚のない平たいナメクジのような怪物となって襲ってきた。

怪物から分離した小さいのが脚に張り付いてくる。

それを無視して本体と戦おうとするところで目が覚めた。

 

脚にアリが上っているので払う。

テントの端の穴からアリがたくさん侵入している。

アスファルトの上は熱くて眠れないが草の上はアリが侵入する。

まだアリの方がマシだけれど、雨が降ったら水が侵入してくるのも困りものだ。

やはり穴は無くすべきか。

 

塞いでも塞いでも穴が無くならないのは、テントの底が擦り切れて穴予備軍ができているからだ。

テントの下にグランドシートを敷くが、シートからはみ出た部分で穴が空くらしい。

これはもう少し大きなシートに買い換えるべきだろう。

ピッタリのシートなんてないから、サイズが合うようにカットする。

シートを買うのも穴を塞ぐのもここではできない。

とりあえず、要対処案件だな。

 

朝食の米にはアリがいなかった。

よしよし。

ごま塩を振って食べる。

ごま塩がなくなってきた。新しく買わないと。

すぐなくなるんだよな。

 

朝食を終えて着替えようとすると、昨日脱いで放っておいたズボンにアリが集っている。

なんでだよ。

アリはゴミ袋にも集っているようだ。

もう好きにしろよ…。

インナーとTシャツは…臭いから新しいのにするか。

アリが多い。外でやろう。

 

テントから出て荷物を外に出していく。

うんこしたくなってきた。

周辺にトイレはない。

トイレがない所は自然の中であることが多いのでいつもは野糞するが、ここは道路の脇の整備された休憩所なのでできない。

トイレまで歩かないといけないが、そのためには準備をしないといけない。

 

テントから荷物を出し終える。

アリ多すぎだろ。

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お前らは一体何がしたいんだ。

こいつらはテントにしがみつく力が強いので、虫除けスプレーで弱らせてからテントをひっくり返し、バサバサとやってアリを落としていく。

執念深く天井に張り付いているやつを手で取り除いていくが、どうせ全部は無理だ。

アリがたくさん入った日の翌日、アリのいないところでテントを張っても前日のやつが残っていて猛威を振るう。

帰れ。ここはお前らの家じゃない。

 

テントをたたむ。

うんこしたいなあ。

焦りが生まれる。

イライラしてきた。

 

ズボンからアリをはたき落とす。

汗で濡れているので、洗濯袋に入れる。

着替えを出していくと靴下がない。

「靴下がない…」

最近まともな水道のあるところで眠れていないので、朝少量の洗濯物を洗ってザックにぶら下げて乾かしながら歩く、ことができていない。

もうなくなったか。

「どうしようか」

どうするもこうするも、靴下無しで歩いたら足の裏が大変なことになる。

仕方ないので洗濯袋から靴下を出す。

汗で濡れている。これは駄目だ。

濡れていないやつ…は、これだ。

当然のように臭い。

だからどうした。

こっちはうんこしたいんだ。黙ってろ。

もちろん誰も喋っていない。

 

靴下を履こうとすると穴が空いている。

縫って穴を塞がなければ。

穴を塞がないと、その部分だけ足の裏がダメージを蓄積してマメができてとても痛い(経験済み)。

要対処案件が増えた。

うんこしたいのに。他の問題が出てくる。

焦りが苛立ちを生む。

面倒くせぇ…。

 

荷物をザックにしまっていく。

ナイフや箸、ハサミ、マイナスドライバーが入っていた袋は穴が空いてボロボロになっていたが、昨日テープで補修したら袋として使いやすい状態に戻った。

水筒の蓋は大胆に割れて欠けているがそのまま使えている。

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ザックに全部入った。

マジでうんこやばい。

スマホで調べる。

ちょっと降りたところにヤマザキショップがある。

ヤマザキショップコンビニエンスストアと表示されているが、24時間営業していなかったりトイレが無かったりする。

写真を見るとトイレはなさそうだ。

ヤマザキショップはコンビニとは認められない。

なぜならトイレがないからだ。

本当にどこにもトイレが無いのか?

周囲を見回すがどう考えても野糞していい環境じゃない。

もう一度グーグルマップを見る。

ファミリーマートがあった。

ここだ。

 

準備体操はアキレス腱だけにしてザックを背負い、歩く。

なんとかファミマに着いた。

ファミマにはトイレがある。

なぜならファミマはコンビニだからだ。

たまに無いこともあるがここにはあった。

洋式のトイレに座る。

ああ…終わった。

最大の要対処案件が解決する。

 

残りの要対処案件を思い浮かべた。

グランドシート、テントの穴、洗濯物、靴下の穴…。

一つ一つ対処していこう。大したことはない。

今日は……尾道までか。

 

 

因島

しまなみ海道は、愛媛県今治市広島県尾道市をつなぐ。

つまり間の島も今治市尾道市に分かれている。

生口島から因島に入って、突然コンビニが増えた。

少し街の雰囲気も違うので、この島から尾道市に入ったのか?と思ったが、実際には生口島から尾道市だった。

島ごとに特徴が違うらしい。

因島では、昔蚊取り線香などに使われた除虫菊が栽培され、一面の花畑が美しかったそうだ。

現在は一部保全されているのみである。

化学製品に取って代わられたのだろうか?

 

因島を歩いてまた橋を渡り、しまなみ海道最後の島、向島に着いた。

公園の屋根の下で昼休憩。

風が吹いて気持ちが良い。

スーパーなどでは早くも秋の商品を売り出し、そのために秋の味覚!と宣伝している。

まだ9月にもなっていないけれど、僕の感覚では9月はまだ夏だ。

そして台風の季節でもある。

実際、台風10号は四国を目指しているらしい。

けれど、穏やかな瀬戸内海を眺めていると、ここに台風が迫っているなんてまるで嘘のようだった。

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飛び込み

向島の海岸沿いを歩いていると、海の方から騒がしい声が聞こえてきた。

目を向けると、海辺の方に4人ほど青年がいて、どこか遠くに話しかけている。

視線の先には大きな橋があり、その上に5人ほどの青年。

橋には大きく高さ14mと書いてある。

 

海辺の方では「早く跳べ!」「行け!」などと言っていて、橋の方からは「やべぇマジで高い」「お前らも跳べよ、このチキンども!」などと言っている。

事情は飲み込めてきた。

青年達は、この高い橋からの飛び込みを企画したが、実際に飛ぶ側と見ている側に分かれているのだ。

何かのゲームの罰ゲームかもしれない。

 

それにしても見れば見るほどとんでもない高さである。

僕なら飛べない。

あれは練習がいる高さだ。

いきなり飛ぶのは無理がある。

野次馬八割心配二割で見ていると、海辺の青年が「旅人さんが心配してるって!」とこちらに水を向けてきた。

一応、「練習とかしてるんですか? もっと低いところで」と聞いた。

「してますしてます」「素人じゃありません」「特別な訓練積んでるんで、僕ら」「30mから飛び込んだこともあります。骨は折れませんでした」

などと言う。

僕がいるといつまでも飛べなさそうなので、「そうですか。なら―」

と彼らに背を向けて歩き出した。

 

ホントかよぉ…。

30mとか絶対嘘だろ。

まあ、彼らの気持ちはわかる。

無茶やってる時に部外者に警察を呼ばれでもしたら最悪だ。

その辺は僕もわきまえているのでそんなことはしない。

部外者に警察呼ばれて止められるぐらいなら、無茶やって大怪我した方がマシなのだ。

 

とはいえ、あのビビり方は明らかにこの高さは初めてです、と言っていた。

高さ8m程で飛び慣れていたら、まったくの素人とは危険度がまるで違うのだろうが、彼らはどうなのだろう。

まあ、さすがにいきなりあの高さから飛び込もうとはならないと思うが…。

 

心配ではあったが、それよりも馬鹿なことをやっている青年が見れて嬉しかった。

若者はこうでないとな。

僕もなんか無茶やろうかな…。

でも一人なんだよなぁ…。

 

 

尾道

しまなみ海道から尾道に抜けるルートは、最後の尾道大橋だけは歩行者自転車道がなく、渡船で渡るのが一般的のようだった。

渡船料は110円と安い。

しかも尾道市街地は渡船で渡った先に広がっている。

尾道大橋を渡ると、市街地まで歩かなければならない。

そんな事情から、何もなければ名物でもある渡船を利用してみたかった。

しかし歩いて日本一周中である。

マップで調べると、尾道大橋にも細い歩道はあるようなので、歩いて渡ることにした。

 

実際に行ってみると、尾道大橋の歩道は人ひとり分の幅しかなく、しかも定期的に橋を吊り下げる金属線が道をふさぐ。

それを避けるにはガードレールが邪魔なのでその部分だけガードレールが無い。

つまりそのぐらい狭い。

ちょっと車道にはみ出ながら金属線を超えて歩く。

だから自転車は歩道を渡れない。

自転車で渡る場合は車道を走ることになる。

 

橋を渡って歩き、市街地に入った。

尾道は変な街だった。

狭い路地裏が至るところにあり、とても道とは思えない狭い道を歩いていくと、当然のようにその先に店がある。

その店にはそこからしか入れないのだ。

古い建物を改装した店など、店自体も個性的なものが多い。

そしてなんと言っても斜面に出来上がった街が面白い。

結構急な斜面に当たり前のように密集して建物が建てられ、その間を縫うように細い道が上がったり下がったり曲がったりでおよそ広くて真っ直ぐな普通の道なんてない。

立体的に展開する細い道。

その先に店があったり寺があったり公園があったり墓があったりする。

街歩きがこんなに面白い街はいまだかつて訪れたことがない。

まるで絵本の世界である。


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二人並んで歩けない細い道がデフォ。


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この先の階段に店。ていうかこれ階段なのか?


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歩道橋。なんかいくつか合体してるんだけど。


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渡る場所を作るのに困る線路。尾道ではこうやって解決する。

これ、普通に道路の脇に当たり前のようにある。


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曲がりくねり登る道。

 

前に古本屋で買った怪談小説を古書店で売りたくて古書店をいくつか回った。

京都にもあるようないかにもな古書店から、お洒落でちょっと怪しげな雑貨店の2階にある古書店と、個性的だ。

どうもこの怪談小説を一冊売ろうとしてもお金にならないようなので、それは諦めた。

 

最後に寄った古書店は、細い路地裏を歩いた先にある、アパートの一階、奥にあった。

中に入ると一畳ほどの小さい部屋に棚があり本が置いてある。

古書店は右の小さな入口の先です。靴はここで脱いでください』

と書いてある。

右の小さな入口ってどこだ?

一畳しかない部屋の外を見てもそれらしきところはない。

棚の本を一通り見てから、ちらっと後ろを見ると、壁だと思っていたところに70センチ四方ぐらいの木の板がある。

スライドさせてみると開いて、その先に本屋があった。

いやいやいや、忍者屋敷じゃないんだから。

 

四つん這いで通り抜けながらも、個性的な店に心は喜んでいる。

店内は、古書店としては普通の広さ。

つまり狭い。

蔵書は漱石関連が少し多いぐらいで、普通かと思いきや、奥に椎名誠の棚があった。

そこには椎名誠の本がずらりと並んでいて、一見して新品並みに綺麗、というか店主が買ったんじゃないかというぐらい綺麗なものが多いのだが、どれも200円で、三冊で500円という驚愕の安さ。

 

椎名誠のことは、カヌーイストの野田知佑さんが椎名誠と怪しい探検隊にいたというぐらい、あとはノンフィクション賞で野田さんの『日本の川を旅する』を審査する側だったという話を聞いたぐらいで、よく知らなかった。

何冊かパラ見してみると、とても面白そうだったので一冊買った。

 

尾道は非常に楽しい街だ。

ここはラーメンの激戦区でもあるらしく、尾道ラーメンという売出しで、いくつものラーメン屋があった。

これは教養として食べておかねばならないだろう。

いや、あくまで教養としてね。

そんな、欲望に負けるとかそういうのではなく…。

 

尾道ラーメンくいしん坊千両という店に入って、チャーシュー麺を頼んだ。

尾道ラーメンが食べ切れない人のために、と小サイズが売っているぐらいなので、大きいのが来るかと思ったら普通サイズだった。

鶏ガラしょうゆのあっさりしたラーメンで、旨かった。

チャーシューも脂身は少なく、あっさりしながら味はしっかりしみていて、とても美味。

量が足りなかったので替玉を頼んだ。

美味しかった。

 

 

しまなみ海道の旅

四国本島にいた頃、しまなみ海道は四国と本州をつなぐ道に過ぎなかった。

船でなく歩いていけるならそうしよう、というぐらい。

ついでに、道の駅もいくつかあるようだから、そこで広島の旅の準備をしようと思っていた。

 

しかし実際にしまなみ海道を歩き終えてみると、これは紛れもなく一つの旅だった。

しまなみ海道の旅』という一つの旅で、それは尾道の街歩きを最後に、今日終わったのである。

実に面白い旅だった。

 

しまなみ海道を歩く時、僕はしまなみ海道の旅を楽しむばかりで、次の旅の準備などしていない。

正確には、島の上は結構田舎で、ゆっくり腰を下ろせる無料WiFiスポットもなかったので、準備ができなかった。

道の駅も、無料WiFiなどはなかった。

 

念のためしまなみ海道に入る前に、広島の旅の大まかなルートと地図のダウンロードはしてある。

そしてこれは、山間部の旅になりそうだ。

四国のように、頻繁に道の駅があるわけでもないだろう。

そもそも四国は全体的に旅するのに都合の良いところだった。

これからはそうではない。

さて、どうなるのだろう。

まずは東に歩いて、福山市仙酔島を目指す。

この辺りは市街地があるので、準備はしやすいだろう。

その後は山間部に入る。

山間部。道の駅がなかったら、スマホの充電はどうするのだろう。

まあ、なるようになるか。

 

 

歩いた距離:24km