今日は温泉に行くつもりだった。
しかしコンロが壊れたので修理しなければならない。
修理にはドライバーとモンキーレンチが必要だ。
ホームセンターが開く8時を待った。
8時になり、ホームセンターに行ったが、やはりというか、値段が高い。
一番安いドライバーで200円、モンキーレンチは700円する。
よく考えたらどちらも百均にあるので百均で買うことにした。
近くのダイソーが10時に開く。
これもよく考えたら、ホームセンターも百均も大体どこにでもあるので、開店時間を待つ必要はない。
歩いて進んで、大体の店が開店してから店を探せばいいのだ。
ということで歩くことにした。
海側を目指しながら西へ進む。
20キロ程先に500円で入れて良さそうな温泉があるので、そこに向かう。
途中でダイソーに入ってドライバーとモンキーレンチを購入。
分解して直そうとしたが、ネジが固まっていて、異常に固い。
とはいえレンチを使っているので、回らないことはない。
無理矢理回すと金属のパーツが捩じ切れた。
…こりゃダメだ。
幸い部品交換でどうにかなりそうなので、ネットで部品を買った。
明日届くので明日到着するであろう場所のコンビニで受け取るようにした。
初めの日は14キロ、次の日は17キロで足が痛くなり、こんなので大丈夫かと思ったが、今日は20キロ歩いてもあまりこたえなかった。
少しずつ慣れていけば1日に歩ける距離は伸びていくだろう。
温泉に着いた。
清児の湯という温泉で、500円で入れる。
食事処と漫画コーナーがあり、店員さんは親切だった。
何しろ旅に出てから一週間以上、一度も風呂に入っていない。
毎日体を吹いていたし、公園や道の駅で何度か頭を洗っていたので、主観的にはそこまで汚くも臭くもないつもりだったが、入念に体を洗った。
湯船に浸かって力を抜いた瞬間、今まで感じたことのない気持ち良さに包まれ、思わず笑ってしまった。
全身くたくたに疲れていて、しかも一週間ぶりの風呂。
ここまで心地よいものか。
500円で得られる幸せとしては最高峰に位置していた。
金があればたいていのことはできる、という人がいる。
確かに、現代日本で一般的に良いとされているものはほとんど、金で手に入るだろう。
しかし、同じものを手にしても、そこに何を感じるかは人によって違う。
どれだけ幸せになるかも、もちろん違う。
僕が思うに、幸せになるために必要なのは、何でもできる程大量の金ではなくて、何かを少しだけできるお金と、その何かを最大限楽しめる心持ちなのだ。
偉そうに語ったが、何が言いたいかというと、とても温泉が気持ち良かったのである。
温泉の壁には至るところに、併設する食事処で食べられる唐揚げの張り紙があった。
唐揚げ定食は、唐揚げ4つ、ご飯、みそ汁付きで680円だそうだ。
今日はコンロが使えない。
つまり自炊できない。
湯から上がると、僕は吸い込まれるように食事処に行き、唐揚げ定食を頼んでいた。
ビールの張り紙もあり、かなりのダメージを受けたが、何とかビールを頼むことは我慢できた。
金はない。金は常にないのだ。
無駄遣いはできない。
ゴツゴツと大きな唐揚げは、噛むと肉汁が溢れ、旨味が口いっぱいに広がった。
美味い。なるほど、唐揚げが自慢な訳であると
隣にいた常連らしいおばさんは唐揚げを12個も頼んで一部を持ち帰ると言っていたが、後から2個買い足していた。
ご飯は追加で三杯くらい欲しかったが、手頃な価格であるし、そこは仕方がない。
みそ汁も濃いめで、運動と温泉で汗を流した体にちょうど良かった。
併設されたコインランドリーで溜まった衣服を洗濯している間、漫画コーナーで漫画を読む。
重い荷物はカウンターの裏で預かってもらえた。
素晴らしい温泉だった。
入浴料500円でこのサービスはなかなかない。
全身さっぱりして、暗くなってきたので店を出た。
夕方の風が心地良い。
近くの公園にテントを立てた。
明日はよく歩く。
今日もぐっすり眠れそうだ。
…それにしても、昨日の夜水につけた米と乱切りにした茄子、どうしよう。
とりあえず明日の自分に任せて寝てしまおう。
おやすみ。
歩いた距離:25km