雨の日は 雨を愛そう
風の日は 風を好もう
晴れた日は 散歩しよう
貧しくば 心に富もう
―堀口大學
雨になるといつも、この言葉が思い浮かぶ。
今日は1日中雨だった。
雨が好きだ。
しかしそれは、どしゃ降りの雨の中に出るのが良いという訳では無い。
雨の日は、雨の気配を感じながら、屋内で静かにしているのが幸福なのである。
そこで今日は歩くのはやめにして、図書館に行った。
図書館へは徒歩で行くが、重い荷物はテントに置いてきたので足取りは軽い。
最終章だけ読めていない有頂天家族を読むのだ。
読み終えると爽やかな読後感だった。
ドタバタのめちゃくちゃなやり方で、なんだかよくわからんが丸くおさまった、という感じがらしくて良い。
森見登美彦も好きな作家だ。
次に、CWニコルのアファンの森の物語、続いて野田知佑の筏でユーコン川を下るエッセイを読んだ。
この二人は僕の尊敬する人たちだ。
前者は日本の自然を惚れた元イギリス人のニコルさんが、日本の壊れた森を自費で買い取り、『アファンの森』と名付けて豊かな森に再生させていく話だ。
日本の森林は、人工林化され、放置され、人は山から遠ざかり、壊されてきた。
世界でも日本にしかない誇るべき財産であるのに。
ニコルさんのアファンの森は、それをどうにかする第一歩を踏み出してくれた。
これはその物語だ。
後者は、世界各地の川という川をカヌーで下って回ったカヌーイストであり冒険家の野田さんが、ユーコン川を筏で下った時の話だ。
ニコルさんの本を読んでは、「ああ、この後を継ぐのは俺だ。俺がニコルさんの踏み出した一歩を進めて、日本の自然を取り戻すのだ」と決意めいたものを胸に抱き、野田さんの本を読んでは、「やっぱりこうでなくちゃなあ! 俺も日本一周が終わったら、次はもっとハードな冒険に出るのだ!」と熱いものを胸に燻らせた。
我ながら影響されやすい。
これが若さというものだろう。
この旅で会った人からは「年は30ぐらい?」「え、老けて見えるなぁ」「それにしては大人に見えるな」とか散々言われたが、僕はまだ23である。
それにしても野田さんの文章は本当に良い。
真っ直ぐな言葉がガツンと胸に来るのだ。
読みながら熱くなったり、声を出して笑ったり、切なくて泣きそうになったりする。
僕も作家を目指しているけれど、こうは書けない。
こうして人の心を動かす文章を書くには、小手先の技術ではなくて、僕自身の内面の成長が必要だと思って、それもあって、今こんな旅をしているのだ。
野田さんの文章を読んだ後、歩いてテントに戻ってきた。
頭の中はずっと、この旅が終わったら次はユーコン川を下るのだ、いやまずはこの旅をどういう旅にするかが大事だ、俺はこの先、どう生きるのだろう、ぐるぐる考えていた。
テントに入ると、ニコルさんと、野田さんの言葉が思い出されて、自分のこれからの人生に対する思いと混ざりあって、ごちゃごちゃのまま何かがこみ上げてきた。
よくわからないけれど泣きそうだった。
きっと雨のせいだろう。
そう思うことにした。
夕飯を作ろうとしたらコンロが壊れていて使えない。
まーじかー…
歩いた距離:8km