早朝、河口の浜は風も波も静かで、涼しく、気持ちが良かった。
昨日の炊き込みご飯の残りを朝食にする。
日が昇ってくると、今日は暑かった。
そして風が激しかった。
海上と陸地の気温差から発生する海風だろう。
あまりに風が強いので、テントが変形する。
しかも砂が舞い上がるため、少しでもテントを開けると砂が入ってくる。
入口がちょうど風に向き合う方向なのだ。
テントの向きを変えたいけれど、この風ではそれも難しい。
テントの中は照りつける日差しで暑く、とても居心地が悪い。
この日はザックの補強とコンロの修理をする予定だったが、テントの中も外も環境が悪い。
近くに24時間営業のスーパーがあり、しかも休憩スペース付きなのでそちらを利用することにした。
ザックの補強もコンロの修理もすぐに終わった。
久しぶりに裁縫をすると案外楽しかった。
WWOOFとカウチサーフィンについてもう一度検討すると、どちらも日本ではホストが少ないようで、ホテル代わりに使える様子ではない。
WWOOFは宿泊よりも有機農業や自然に優しい生活を体験する側面が強いようだ。
短くても４日から一週間、長いと一年滞在するようである。
目的は少し変わるが、それはそれで楽しそうだし、農業には興味があるので登録申請をしておいた。
昼になると、やるべきことがなくなった。
風が強すぎて釣りする気にもならない。
浜辺でぼーっとしながら砂混じりの強風を浴びて、ボブ・ディランの風に吹かれてを口ずさむ。
How many roads must a man walk down before you call him a man?
How many seas must a white dove sail before she sleeps in the sand?
Yes, how many times must the canon balls fly before they're forever banned?
The answer, my friend, is blowin' in the wind.
The answer is blowin' in the wind.
図書館かブックオフでも探そうと思ったが、スマホは充電をしてもらうためドコモショップに預けたのでマップは見れない。
まあ、ぶらぶらしていれば見つかるだろう、と歩き出し、見事に道に迷った。
図書館もブックオフも見つからなかったが、一つ分かったことがある。
チェーン店というのは、ほどほどに近い場所に同じ店が立つ傾向にある。
歩いていると、さっきも見た店が、別の場所にもあるということがままある。
その割に本屋もブックオフもない。
近くの地域に複数同じ店を置くことで、その店の地域における認知度を上げるためなのだろう。
とある名前の店が家の近くにはたくさんあるので、かなり一般的な店だと思っていたら、他の地域にはほとんどない店だった、という現象はこの戦略により起こる。
ともあれ、帰り道が分からない。
それどころか自分がどこにいるのか分からない。
もと来た道を戻ればいいのだと思うかもしれないけれど、歩いているうちにもと来た道が分からなくなる人を方向音痴と呼ぶのであり、僕はその方向音痴なのである。
というか、もう大分歩いて来たし、途中何度か曲がって頭の中ではスタート地点に近づいているはずであり、戻るのは嫌だった。
などと言って現在地すら把握できていないくせに勘を頼りに歩き出す。
僕はよく道に迷う。
それは僕が方向音痴なことに加え、道に迷うことを悪いことだと思っていないからである。
道に迷ってもいいやと思いながら歩く。
いやむしろ今回は、自分から迷いにいった節がある。
この先に何があるのかまったく分からないという状況には少し高揚する。
道に迷うことでランダム性を楽しむことができるのだ。
とはいえ今回は足を休ませるために休憩していたのに数時間も歩き回ることになるとは思わず、さすがに嫌になった。
最終的に、人に道を尋ねて帰ってきた。
見覚えのある風景まで戻ってきた時はほっとしたものだ。
足が、痛かったはずなのだけれど、今日はあまり痛みを感じなかった。
明日は少し移動するつもりだ。
今の場所は日中海風の影響をもろに受けて居心地が悪い上、すべてが砂まみれになる。
焚き火ができるのは良かったけれど、こことは今日でお別れだ。
とりあえず香川県に向けて歩いていく。
香川県でやることはうどんを食べるぐらいしか決めていないけれど、知らないだけで綺麗な自然が残っているかもしれない。
ちょっと考えてルートを決めたい。
歩いた距離:15km?
