歩いて日本一周ブログ

歩いて日本一周する記録とか雑記

仁淀川から四万十川へ

昨日

昨日は電波が届かなかったのでブログが書けなかった。

仁淀川を歩いていて、途中で長者川に分岐して、そこから四万十川源流点へと繋がる峠の手前まで行って力尽きて路肩で野営したのだった。

 


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これが現存する高知県で最古の沈下橋、久喜橋だ。

昭和10年に作られている。

沈下橋は元々丸太を使ったものだと思っていたけれど、それは有名なある沈下橋のことで、最初から鉄筋コンクリートが主流だったみたいだ。

そもそも沈下橋とは、地元住民が生活用に橋がどうしても欲しいが、普通の橋は費用がかかりすぎるということで、増水時には沈んでしまう低い橋を建てたものだ。

その前は渡し船で川を横断していて、雨で増水する度通れなくなり、小学校などは休校になったようである。

 

また、ある話では、沈下橋の上を少々増水した川が越えていても、普通に通るらしい。

この時、足元をみて渡ると、自然と上流の方にずれてしまい、橋から足を踏み外して落ちてしまう。

これにより、外から来た人が死亡する事故も起きている。

慣れている地元民は、渡る先の一点を見て進むため、橋から落ちることはないんだとか。

 


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これは昨日通った場所の位置を大体で示した図。


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まさに生活用の小さな沈下橋

雰囲気が良い。

 

途中、集落で橋の上から竿を垂らす子供と、そのおばあちゃんと思われる人がいた。

何を釣っているのか聞こうと近づくと、橋の手前の長椅子とそれを覆うだけの屋根がある場所で、二人のじいさんが話していた。

「兄ちゃんも」

と手招きされたので、こんにちは、と近づいていく。

「歩いとる人か」

「はい。歩いてます」

聞かれるままに、どこからどうやって来たか話していく。

じいさんの一人が「偉いなあ」と言う。

これは僕が自分の足で歩いていることに対して言ってくれているのだけれど、フラフラしてると見られることが多い中、こう言われると嬉しい。

すごい、と言ってくれる人は多いけれども、それはまたニュアンスが違う。

 

橋から竿を持って少年がやって来る。

「何釣ってんの?」

「アユ」

少年の竿の仕掛けは単純で、一番下にオモリ、その上にトレブルフック、3本針のイカリのような形の針が2つついている。

アユは苔を食う魚だ。

だからエサでもルアーでも毛針でも釣れない。

代わりに、縄張りに入ってきた他のアユに体当たりする習性を利用した友釣りが一般的だ。

少年がやっていたのはもっと単純。

橋から仕掛けをおろして、上から見てアユが針の上に来たら身体に引っ掛けるのだ。

聞くと全然釣れていないらしい。

この辺りの人はみんな釣りをしている。

釣れている人も、釣れていない人も。

この引っ掛け釣りをしている人も数人見た。

一様に真剣な顔でしている。

綺麗な川、新緑の田、青く澄み渡る空。

ああ、良いなあ。夏がやって来た。

僕が一番好きな季節。

 

昨日は最後に太郎田という寂れた集落を通った。

良心市と書いてある無人販売所に、トマトが3個入り100円で売られていたのでこれを買う。

夕食はこれを使ってカレーにした。

トマト、ピーマン、大豆。

色合いはピザのようである。

美味であった。

 

 

四万十川源流点

今日は朝から峠越えだ。

峠を越えると四万十川の源流に入る。

そこでこんなものを見つけた。


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お遍路にちなんで、四万十川八十八箇所というものを作ったらしい。

その87番目が追合の滝。


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なかなか悪くない滝である。

他は分からないが、88番目だけは予想できる。

四万十川源流点だろう。

思いの外歩いた。


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もっと湧き水のようにちょろちょろ出ている所まで行くこともできたが、一応ここが源流点ということになっているようなのでここでいいことにする。

ここから四万十川を河口まで歩いていくが、八十八箇所すべてを見るのは無理だろう。

右岸左岸の問題もあるし、見逃すと思う。

 

 

道の駅布施ヶ坂

四万十川源流点の道の駅、と題された道の駅布施ヶ坂は、まさに辺境の道の駅である。

山の斜面に民家がいくつか立ち並び、その下に道の駅はある。

道路を挟んで向かい側は展望となっているが、そこからは茶畑と山しか見えない。

遠くまで見渡せるが、山しかない。

 

ここで耐えきれずに甘味を買った。

冬期限定ボンボンショコラ事件を読み、甘味への欲が最高潮に達していた。

茶が有名なこの地で採れたほうじ茶を使ったほうじ茶ソフト。

口にした瞬間ふわりと甘みが広がり、思わず口角が上がる。

美味い。美味すぎる。

久しぶりの甘味。

これまでも道の駅やいたるところにソフトクリームやアイスクリンが売っていた。

その他美味しそうな甘味は山程見てきた。

それらの誘惑にこれまで必死に耐えてきたのだ。

ソフトクリーム、美味い。

また、ほうじ茶大福も買った。

ああ、最高。

僕は元々甘味は好きだ。

というか食べることが好きなのだ。

これからはもっと甘味も食べていこうかな。

今日の経験でこの地がお茶の産地であることは忘れないだろう。

土地の美味しいものを食べることは教養を育む。

やはり甘味を食べるべきか…!

…しかしそんな金はないのである。

 

さらにここでは地元で作られたどぶろくが売っていた。

これは買い。

 

 

困ったこと

旅では困ったことがいくつも起きる。

そうした困ったことに自らの力で対応していくことこそ旅の醍醐味なのだ、とカッコつけてもいいかもしれない。

 

今日の僕は殊更困っていた。

実はそうしたストレスが僕を甘味に向かわせたのだ。

困りごとについてあれこれ頭を悩ますのは、ある程度を超えると考えている振りをしているだけで思考は堂々巡りしており、建設的ではない。

しかしそれをきっぱりやめるのも困難なので、ちょっと良い気持ちになって気分転換するのが良いのだ。

甘味を楽しんでいれば、悩み事なんて忘れる。

 

困りごとその1、背中にトゲのようなものが刺さっている。

昨日峠道の路肩で土や枯葉、草などが雑多にある場所にテントを張る時、そこが凸凹で寝にくくないか確かめようと、グランドシートを敷いて寝転んだ。

その時背中に小さなトゲが何本も刺さる感覚があった。

それからだ。

今日ザックを背負うたび、背中に数百の小さなトゲが刺さる感覚。

痛い。

しかもザックを背負うたびに背中に食い込んでいる気がする。

 

困りごとその2、スマホの意識がない。

これはこのブログを書けていることから分かるようにもう解決したのだけれど、突然スマホが光をなくして沈黙し、電源ボタンを押しても長押ししてもうんともすんとも言わなくなった。

最悪もう二度と目を覚まさないかと思ったので、そうなったらどうするかを含めて悩まされた。

今日のテント場で開いてみると何事もなかったかのように開いた。

 

困りごとその3、僻地すぎる。

徳島の剣山の経験から、郵便局のあるレベルの集落にはガソリンスタンドがあり、米や酒、その他お菓子や缶詰、日用品を売っている個人商店が1つはあると見ていた。

今日、米はなくなっており、コンロの燃料たるガソリンは、ギリギリ今日の夕食の分はあるが、明日の分はないぐらいだった。

実のところ、どちらも昨日買えた。

しかし、できるだけ軽くしたかったし、この2つはどこでも買えると踏んでいた。

しかし郵便局のある集落なのにガソリンスタンドは廃屋と化しており、個人商店はない。

 

近くの道の駅には、ブランド化された高い米しかない。

3kgで1400円は高い。

ヤマザキショップがあったが、米は売ってない。

一人しかいない店員のおばちゃんに、この辺りで米を売っている店はないか尋ねた。

「この辺りやとみんな自分の分だけ作りゆうき」

つまり自分の米は、自分で作るが、売るほどは作っていないらしい。

事情を説明すると、どこかに電話して、店の裏から米を持ってきて売ってくれた。

3kgで880円。

これは普通より安い。

無いなら無いでこの先に期待するしかないと思っていた。

こんなに親身になってくれるとは。

ありがたい。

あとはガソリンスタンドだが、明日歩けばあるだろうか。

 

こうして改めて見ると何一つ自分の力では解決していない。

どう対応するかというより、困りごととどう付き合っていくか、と言った方が正確かもしれない

 

輝くもの

昨日もそうだったが、テントを張る場所がなかなかない。

河原で張れるかと思っていたのだが、ある程度流量がないと河川敷は生まれず、両側は背の高い草に囲まれる。

とにかくテントを張るスペースと清潔な水さえ手に入ればと、最終的に湧き水のそばの路肩に泊まる。

歩き疲れて半ば投げやりにザックを下ろすのだ。

 

今日の夕食は卵の味噌汁と、名も無きピーマン卵。

ピーマンを炒めて、卵、出汁、塩、砂糖、醤油を合わせた卵液を流し込み、スクランブルするだけのものだ。

見た目はゴーヤチャンプルー

美味かった。

こういう単純な料理は調味さえ間違えなければ大体美味い。

どぶろくは大変美味であった。

 

 

夜、立ちションに出ると、ホタルがいた。

昨日は、もっとたくさんパチパチと点滅しながらホタルが飛んでいた。

水がきれいなので、この辺りではどこでもホタルが見れる。

今日は星も見えた。

たまたま流れ星がスゥッと流れていった。

仁淀川四万十川上流域は、日本でもトップクラスに美しい場所であろう。

 

 

昨日歩いた距離:27km

今日歩いた距離:33km