焼き芋
今日一日はすべて焼き芋のためにあった。
焼き芋を焼くことだけを考えて歩いた。
本当は一日かけて焼き芋を焼いては食べるだけでも良かったのだけど、歩いた先に温泉があったから歩くことにした。
温泉に入り、さっぱりしてから焚き火で芋を焼く。
ついでにサンマも焼いて最高の晩餐にしよう。
秋とは、今日この日のためにあったのだ。
温泉
頑張って歩いていつもより早めに目的地に着き、すぐに温泉に入った。
久しぶりの温泉をじっくり堪能し、さっぱり気持ちよくなって出てきた。
ここまでは良かったのだ。
問題はここからである。
近場のスーパーでサンマを買って戻るだけなのだが、近くに安いスーパーが無いのだ。
スーパー自体少ないし、あってもサンマ四尾パックだとかでちょうど良いのがない。
結局大分歩いて、その末サンマは無いので別の魚を買うというなんだかよく分からないことになった。
しかも帰り道がまたやたら長いので、歩いているうちに暗くなってしまった。
今日は、いつもと違い焼き芋がメインなので、午後3時ぐらいから始めるつもりだったのに、むしろいつもより遅くなった。
真っ暗な中、重すぎる荷物を持って浜辺に降り立ち、ようやく焚き火を始めた。
雨で少し湿っていて、火付けになるようなものもあまりないので、最初は少し手間取ったが、風が強くて木は大量に落ちているので、一度火をつけるとぐんぐん燃えた。
燃やしたいゴミもたくさんあったので盛大に火を焚いて、アルミホイルに包んださつまいもを投げ入れ、米を炊き、ゴミを燃やした。
また、夏の間大変お世話になった麦わら帽子だが、これは次の夏まで持っているのはかなり邪魔で、今も早く手放したくてしょうがない状態だった。
最後は自分の手で燃やしてやると決めていたので、ここで盛大に燃やした。
本当にありがとう。
焼き芋
僕は焼き芋が好きだ。
大好きだ。
どうしてこんなに焼き芋が好きになったかと考えてみると、焚き火と焼き芋の組み合わせが抜群だからだ。
一人で山にキャンプに行き始めた頃、落ちている木の枝で火を起こし、簡単なものでいいから作って食べたいとの思いから、何気なくさつまいもを焼いた時から、焚き火の焼き芋が大好きになった。
温かくて、甘くて、美味しい。
焚き火の炎と共に、その忘れられない味が思い出される。
さつまいもは茹でたり蒸したりするより、圧倒的に焼いた方が美味い。
特に、焚き火で、少し皮が炭化するぐらいまで焼くと、信じられないほど美味い食べ物となる。
焼き芋には時間がかかる。
焚き火を起こし、日が安定したらさつまいもをアルミホイルに包んで突っ込む。
焼け落ちた木の枝は、炭化して赤く熱を持ったまま芋の上に積み重なっていく。
炎は上に向かうので、下にある芋に直接炎は当たらないが、熱を持った炭がちょうど良く芋を焼く。
しばらくして取り出すと、アルミホイルの表面は白く焼けていて、半分に折ると簡単に二つに割れる。
中ではホクホクの柔らかくて甘い焼き芋が湯気を立てている。
表面が炭化していても構わない。
この状態が焼き芋のベストコンディションた。
食べてみると、それは何にも勝る至福の秋の味。
最高だ。
僕はこの瞬間のために生まれてきたのだ。
塩焼き
魚の塩焼きが好きだ。
どんな調理方法でも、魚を扱う時は事前に塩をふる。
浸透圧で水分を出すのだ。
これにより臭みが抜け、身が引き締まる。
塩焼きは、魚に塩をふって焼く、という極めて原始的でありながら、非常に理にかなった素晴らしい調理方法なのだ。
そして美味い。
数多くの魚で、最高の調理方法が塩焼きであると言っても、あながち間違いではないのではないか。
塩焼きで最も好きな魚は、その時の気分によっても変わるが、やはりサンマだろう。
今日はサンマを買えなかったが、まあ昨日食べたし、今日は別の魚でもいいだろう。
塩焼きで2番目に好きな魚は、マダイだ。
今回は見た感じマダイにしか見えないチダイという魚が売っていたので、これを買ってきた。
焚き火は大きく燃え上がり、その下でさつまいもを焼いている。
端のほうの火が弱い所で米を炊く。
チダイは、ウロコと内臓をとって、塩をふっておく。
薪を足さずに置いておくと、だんだん炎は小さくなるが、強い熱を持って赤く灯る薪は残っている。
焼き芋を取り出し、この熱で魚を焼く。
遠赤外線というやつだ。
全然炎が残っているが、これは魚に直接当たらないので大丈夫。
焼き上がったチダイに箸を入れ、塩のついた皮ごと口に入れる。
あぁ……!
美味い。美味すぎる。
400円とちょっと高かったけど買ってよかった!
米もいい感じに炊けている。
なぜかコンロで炊くいつもより全然美味い。
素晴らしい炊き上がりだが、火加減が良かったのか?
ああ……もう……最高……。
こんな時間のために生きている。
素晴らしいな。焚き火と焼き芋と焼き魚。
歩いた距離:24+8km
ザックを背負って歩いた距離と、そうでない距離を分けて記録することにしました。