竜王山
今日登る山だ。
ルートは、車道で徐々に上がっていき、標高730mほどまで登れる。
そこから登山道となり、ぐっと登る。
朝、道の駅で声をかけてくれたおっちゃんが自販機で好きなジュースを奢ってくれると言った。
一番カロリーの高そうなバナナオレを選ぶ。
古今東西、バナナオレが美味しくなかったことなどない。
これで山登りにもやる気が出る。
竜王山の山頂に着いた。
展望はまあまあ。
高台のようなものがあり、それに登ることで展望が開ける。
最後の登りはやはり大変だったが、着いてしまえばこっちのものだ。
食事をとり、オカリナを一曲。
下り
今回は下りが長い。
道がやたらとグネグネしていて、吉野川までかなりの距離がある。
大変だと思っていたけれど、大変だったのは山道の急な下りだけだった。
登りは筋肉がきついが、下りは膝に負担がかかり、登りとはまた違うきつさがある。
重い荷物がない時はこんなふうに感じなかったのだけれど。
車道に出てからが長いのだが、こちらは予想外に楽だった。
道がグネグネしているのは傾斜を緩やかにするためで、かなり歩きやすい道だった。
そうは言っても、長いので疲れたけれど。
また、木の種類が豊富だった。
スギに加え、落葉広葉樹やアカマツも混じっている。
問題となったのは僕の知識量の乏しさだ。
大学時代に樹木の見分け方と名前はある程度覚えたけれど、それもどんどん忘れているし、元々大学周辺の樹木、しかもその一部しか覚えていなかった。
四国に来て判別しようとしても、分からない木が多い。
もちろん分かる木もあるのだけれど。
勉強しなければ。
オトシブミ
オトシブミという昆虫を知っているだろうか。
葉っぱを筒状に丸め、蓋を閉じて木から落とす。
中には卵が産み付けてある。
この葉っぱの折りたたみ技術が素晴らしく、綺麗な円筒状になるのだ。
子供の頃、この不思議な昆虫に憧れて、どうにか見つけたいと、小学校までの道を地面を眺めながら歩いたものだ。
しかし地元でオトシブミを見かけたことはなかった。
四国に来てから、オトシブミの落とした葉筒を見かけることは何度かあった。
それが今回の山では至るところに落ちていた。
惚れ惚れするほど綺麗に畳まれている。
たまに車道に落ちていたので、拾って山に放ってやった。
香川県
相栗峠という峠で県境が記されていた。
これが、僕が日本一周旅で回り終えた1つ目の県となる。
大阪府は南側しか歩いていないので、日本を半周して戻ってきた時、北側を歩くつもりだ。
もうすぐ旅に出て一ヶ月となるが、ようやく一県目だ。
とはいえ、香川県自体を回った期間は2週間ちょっとだが。
海岸線をずっと歩いて、そこから川に沿って内陸を歩いて、山に登った。
これで香川県の全部を見たなんて到底言えない。
ごく一部だ。
それでも、車で走って観光地を回るような旅よりは、ずっと濃密な時間を過ごせたと思う。
他の県も回って、それから香川県のことを考えることで分かることも多いだろうから、今はこの記憶を忘れないように温めておくことが大事だ。
とりあえず香川県の簡単な印象を上げるなら、
瀬戸内海をとても美しく見られる県。
砂浜が多く、野宿もしやすい。無料キャンプ場もある。
讃岐うどんは非常に美味しい。しかも安い。
西側は特に旅人に優しい。
中流域からあまり綺麗でない川もある。調べた所によると、生活排水の処理設備が追いついていないエリアもあるらしく、生活排水がそのまま流されている地域もあるよう。
香川県歩行
日数:15日
歩いた距離:268km
美馬
徳島県に入り、山を下りてきて思ったのは、随分田舎だということだ。
山から下りてきたはずなのに、まだ山にいるようである。
吉野川は徳島県の北側を西から東まで流れる大きな川で、この周囲は平野部となっている。
この辺りは結構栄えていると思ったのだけれど、見渡す限り、田んぼと畑、それから工場しか見えない。
これはとんでもないところに来てしまったかもしれない。
と思ったのもつかの間、西に歩くと住宅街があり、そっちは普通に賑わっていた。
スーパーもないのではないかと危惧したけれど、なんの問題も無かった。
道の駅により、スーパーで買い物し、川の方に下りた。
大きな川であるにも関わらず、非常に透明度の高い綺麗な川である。
夕飯はチキン南蛮。
とても美味しくできた。
夕飯を食べていると、川の対岸から祭囃子が聞こえてきた。
お祭りをしているのだろうか。
夕食後、暗い夜の中、手ぬぐいを川で洗って戻る時、対岸の山の真上に満月が見えた。
非常に絵になる光景だ。
吉野川は月の光を反射して、光を揺らし流れていく。
対岸からは祭囃子が聞こえている。
こちらはひっそりと静かだ。
川を隔てて、向こうとこちらが別の世界のようである。
太鼓の陽気な音に合わせて、月のうさぎが餅をつく。
吉野川の底では河童が宴会をしている。
対岸で太鼓を叩き、笛を吹いて踊っているのは狸たちだ。
愉快な想像に、対岸に行きたくなる。
しかし僕が対岸に行くと、全て消えてしまうような気がした。
歩いた距離:27km