歩いて日本一周ブログ

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ニホンミツバチの自然養蜂

養蜂

今日は養蜂の本を読んでいた。

読んで字のごとく、蜂を育てる仕事だ。

仕事としてははちみつをとって売ることで収入を得るので、対象はミツバチとなる。

日本にいるミツバチはセイヨウミツバチとニホンミツバチの2種類。

このうち、一般的に養蜂の対象となるのはセイヨウミツバチである。

というか、セイヨウミツバチは養蜂のために輸入された。

そして元あったニホンミツバチの養蜂を駆逐していくこととなる。

 

だが、今回僕が興味を持ったのはニホンミツバチの自然養蜂である。

図書館の良いところは、同ジャンルの本が並んで置いてあるため、同ジャンルの複数の本をすぐに読めるところだ。

何冊か流し読みして、2冊の本をガッツリ読んだ。

 

ニホンミツバチは在来の昔から日本にいるミツバチである。

そしてニホンミツバチの自然養蜂は、野生のニホンミツバチを捕まえてくるか、巣箱に誘導して、巣箱に住まわせる。

ミツバチの様子を見て楽しみ、はちみつが溜まったらとる、というものだ。

基本的に、世話は必要ない。

いわば、野生のミツバチに巣にちょうど良い空間を提供し、その代わりはちみつをもらうという関係を築くのだ。

これは、とても面白いと思う。

 

一般的な養蜂とは、セイヨウミツバチをしっかり面倒を見ながら飼い、効率的にはちみつを確保する仕事となる。

何が違うのかと言うと、そもそも扱う生き物が違う。

セイヨウミツバチは、はちみつを採るために飼われ、はちみつを採りやすい生態となった家畜ならぬ家虫である。

はちみつの採れる量は、ニホンミツバチの八倍にもなるという。

一方で、飼い慣らされてきた影響で世話が必要となり、また湿気に弱く、病気に弱く、オオスズメバチに弱い。

大量のはちみつが採れる代わりに、手間がかかる。

この時、養蜂家とハチとの関係は、主人と家虫であり、はちみつは主人のものだ。

 

これに対して、ニホンミツバチは野生動物である。

養蜂の文化は昔から日本にもあったとはいえ、生態を変えてしまうほどのものではなかったのだろう。

セイヨウミツバチは巣箱の居心地が悪くても巣を変えることはなく、餌がなくてもとどまり続け、やがて餓死して群れごと滅びる。

一方ニホンミツバチは巣の居心地が悪ければ巣箱から出ていく。

ニホンミツバチは自由なのだ。

よってニホンミツバチの自然養蜂では、ニホンミツバチに出ていかれないように、巣箱と周辺の餌環境が良くなければならない。

 

また、そもそもはちみつとは、ミツバチ自身、これは女王蜂や幼虫、働きバチを含む、が、餌として使うために溜め込むものだ。

特に冬場をしのぐために巣内にたくさん溜め込む必要がある。

セイヨウミツバチの場合、本来必要ないほど蜜を集める習性になっている。

しかしニホンミツバチはそうではないので、とりすぎると群れが死んでしまう。

昔日本で行われていた養蜂は、群れを潰してはちみつを採るものだったが、継続的に蜜を採るには、ずっといてもらった方が良い。

何より、ニホンミツバチの自然養蜂をしている人は、本を読んでいて分かるがミツバチを家族や友人のように思っていて、はちみつを採る対象として見ていない。

もちろんはちみつが採れれば良いのだが、無理に採ってミツバチを全滅させるようなことはしない。

 

 

ミツバチは可愛いらしい

ニホンミツバチの自然養蜂をしている人は、ミツバチへの愛が深い。

それはなぜなのかと言うと、どうもミツバチが可愛いらしい。

まずニホンミツバチは人に馴れる。

元々温厚で、簡単には刺したりしないハチだが、巣箱を見に頻繁に訪れると、明らかにこちらを認識して、安心したような態度をとるらしい。

最初は警戒する態度なのに、それが徐々に軟化していく。

 

さらに、ある自然養蜂者によると、感情が羽音に出るらしい。

嬉しい時、怒っている時、安心している時、悲しい時、それが分かるようになる。

ニホンミツバチは賢く、感情豊かで、何より愛がある。

と、彼は語る。

 

女王蜂が次の女王を産めない不調が続くと、ハチ全体が焦ったような雰囲気になり、羽音も高く、気が立ったようになる。

この時は刺激するとぶつかって攻撃してきたりするそうだ。

女王蜂が老衰で死にそうになると、群れ全体が絶望したような空気になり、外から刺激しても、敵となる昆虫に攻撃されてもされるがまま。

新しい巣へと群れで旅立つ時は高揚した雰囲気になる。

 

これが本当だとすれば、眺めているのはさぞ楽しいだろう。

そして愛着が湧くのもよく分かる。

 

特に素晴らしいと僕が思うのは、この関係は、ペットと主人の関係ではないところだ。

ペットを飼うのは楽しいし、自分のものにできるのは嬉しい。

犬、猫のような頭の良い動物なら、信頼関係も築ける。

しかしどうしても、自然界にいたはずの動物を飼うことは、自由を奪い、束縛しているという罪の意識を感じてしまうことがある。

 

しかしこのニホンミツバチとの関係では、ニホンミツバチを自分のそばでいつでも見ることができ、一定の信頼関係を築ける上、彼女らは野生に生きているので、束縛はしていない。

むしろ、ニホンミツバチの群れが増えたら喜び、群れが全滅すれば悲しみ、一緒に生きていくような感覚が得られるのだ。

頑張れ! と応援しながら見守る形である。

これが楽しくなってくると、もはやはちみつがメインではなくなってくるのもよく分かる。

 

 

ニホンミツバチと自然

僕が読んだ2冊のニホンミツバチ自然養蜂の本の筆者は、二人とも自然環境への関心が深かった。

元々そういう気質の人がニホンミツバチ自然養蜂を始めるというのもあるだろうが、自然養蜂を始めてから気づくことが多いようだ。

ニホンミツバチは花の蜜と花粉を集めるため、草木の受粉の手伝いをする。

自然養蜂をする過程で、ミツバチが集めてくる大量のはちみつを見てなのか、植物の受粉にニホンミツバチがどれほど貢献しているかに気づいていく。

ミツバチほど草木の受粉に貢献している動物はいないだろう。

 

そのニホンミツバチが、今数を減らしている。

このままニホンミツバチがいなくなってしまえば、日本の自然は大変なことになる。

そういった危機感を抱くようだ。

自然養蜂をしていれば、ミツバチに感染症や気候などの悪影響が出ればすぐに気づく。

こうして彼らは、ミツバチを通して日本の自然全体に目を向けていく。

 

しっかり読んだ本の一冊で、筆者がこんな事を言っていた。

ほとんどの動物は他の生き物の命を奪って生きているが、ミツバチは命を奪わず、受粉という利益を与えて生きている。

これに気づいたとき、やっぱりミツバチは優しい生き物だなぁと思った、と。

この筆者はミツバチ愛が強いあまりかなり正のバイアスがかかっているが、それを差し引いてもこれは面白い。

確かに、草食動物でも植物に害を与えており、それ故に植物は食べられないように工夫して防御している。

しかしミツバチは、花の蜜を得るだけで、その行為はむしろ植物に利益を与えている。

周りの環境を良くして、その良くなった環境で生きているのだ。

そういう視点から見てもミツバチとは面白い生き物である。

 

ニホンミツバチの自然養蜂をしている人にも会ってみたい。

いつか自分でもやってみたい。

小説だけでなく、こういった本を読むと、色々得るものがあるようだ。

まあ、どの本を読むかはその時の気分で選ぶ。

ためになるから読もう、とはりきるものでもないだろう。

 

 

歩いた距離:1km