歩いて日本一周ブログ

歩いて日本一周する記録とか雑記

都井岬

フェニックス

今朝は快晴。

朝から素晴らしい1日の予感がしていた。

歩いてトイレに行くと、早朝の海が美しい。


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ヤシの木がよく映える。

朝の準備を終え、出発。


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素晴らしい天気に恵まれている。

この木は、宮崎県の県木フェニックスというらしい。

なるほど、道の駅フェニックスとはこれのことを言っていたのか。

通りで不死鳥の要素に欠けると思った。

 

 

幸島

幸島の猿の話を聞いたのは、大学の授業でのことだった。

この島の猿には独自の文化が発達している。

それは、さつまいもを海で洗うことで塩味を付け、甘みを際立たせて美味しく食べるというものだ。

元々この島の猿は土で汚れた芋を川や海で洗って食べることがあったらしいが、ある時とあるメスの猿が、汚れていない芋を海水で洗って食べ、それから他の猿も真似してこの文化が定着したのだという。

人間を他の動物と分ける要素については、古くから議論されてきたが、そのうちの一つが文化を持つということだった。

しかし、文化を持つ猿の集団(この行動は幸島以外の猿では見られないため文化と呼べる)が発見されたことでこの説は否定される。

世界的に見ても貴重な発見なのである。

文化を持つ動物の最初の発見がこれだったかどうかは、ちょっと忘れたけれども……。

そしてこの幸島の猿の文化を発見したのが京都大学霊長類研究所の研究者なのだ。

 

その幸島が見える所まで来た。
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すぐ向こうに見えているのがそう。

泳いでいける距離。どころか、大潮の引き潮ではこちらと陸続きになることもあるそうだ。

渡船も出ているが、やめておいた。

幸島ってここにあったんだ……。

授業で受けた場所に知らずに来ていたなんて不思議な感じだ。

 

 

恋ヶ浦

宮崎県有数のサーフィンの名所らしい恋ヶ浦。


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この写真にもサーファーが何人も写っているはずだが……小さくて見えないな。

ちなみに恋ヶ浦の名前の由来は、鳥羽天皇がここに来た時に都が恋しいと言ったことだそうだ。

ホームシックかよ。恋ってそっちなんだ。

 

昼食を食べていると、おっちゃんに話しかけられた。

おっちゃんはサーファーで、ここにも当然サーフィンに来ている。

今は栃木県に住んでいるが、宮崎に移住する予定だそうだ。

「やっぱりサーフィンは宮崎が良いんですか?」

さっきから風が強くて声が聞き取りづらく、お互い聞き返しながら会話していた。

この答えもよく聞こえなかったが、強い力で押してくれるとかなんとか言っていたから、宮崎の海は良いということだろう。

 

一昨日、他に誰もいない所で、激しい波に30m程乗ったすごいサーファーを見たが、そんな話をされても嬉しくはないだろうから黙っていた。

サーフィンのために移住か。

楽しけりゃなんでもいいよな。

宮崎は良い所だし。

 

 

都井岬

今日の目的地都井岬にやってきた。

野生の馬がいると聞いていたが、歩いていると遠くに2頭見かけた。

俄然やる気が湧いてくる。

丘の上になっているので、港が下界に見えて景色が良い。


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駐車場のある広場にザックを置いて、丘をさらに登っていく。

てっぺんの辺りまで来ると、馬が何頭も!


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野生の馬なのだ。なかなか感動した。


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良い一枚。


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馬と海。

間近で見ると、馬のたてがみというのは本当に綺麗だ。

こんなに美しい動物だったのか、馬とは。

 

馬の後ろは危ないと聴くし、野生なのである程度の距離を保って眺めた。

しかし、他の人達が結構近寄っても動じないところを見るに、大分人には慣れて、寛容になっているようだ。

人間のことは無視して草をはんでいる。

僕は草の上に両脚を投げ出して、寝転がったり起き上がったりしながらダラダラしていた。

のどかな時間……。

 

オカリナを吹きたくなってきた。

風が強いので、風に背を向けて吹く。

『風に吹かれて』『カントリーロード』『風になる』

 

一頭の馬が近寄ってきた。

僕の方からは近づけないぐらいまで近づいてきて、僕の靴や足の匂いを嗅いでいる。

臭うだろう? それとも野生の匂いがするかな。

せっかく近くに来たので、「一枚撮ってもいいですか」と断ってから写真を撮った。


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オカリナを吹いたら寄ってきたので、もしかしてと思ってもう一曲吹いたが、足早に去っていった。

そうだよね。興味ないよね。たまたまこの辺の草が美味しそうに見えただけだよね。いいんだよそれで。十分嬉しかったから。

 

その後もオカリナを吹いたりダラダラしていたら、いつの間にか僕の周りには馬が集まっていて、馬に囲まれることになっていた。

もちろん実際には僕に集まってきたのではなく、僕の周りの草に集まってきているのだ。

馬は僕の手前を通り過ぎる時、挨拶のように足の匂いを嗅いでいく。

そんな気になる匂いだった?


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中越しに。


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等倍でこれだからかなり近い。

手を伸ばせば触れられる。

手をついていたら踏まれそう。

たぶん触ってもいいよってことだと思ったのだけど、まぁ初対面だしベタベタするのはやめておいた。

 

僕の周りに馬が集まっているのを見て、あそこに行きたい、なんて言っている人がいる。

チッチッチ。

僕が馬のいる所に来たんじゃなくて、馬が僕のいる所に来たんだよ。

そうじゃないとこうはならない。

変に近づかれたら馬だって距離を取る。

他の人が風に負けてさっさと丘を降りていく中、僕だけは草の上でダラダラしていたし、僕からは馬にあまり近づかなかったので、馬の方が僕のことを気にしなくなったのだ。

馬は賢い動物だから、基本人間と同じだと思ったほうがいい。

人間よりもっと神経質だと思ったのだけど、ここの馬は大分寛容なようだ。

あなたも草の上でしばらくゴロゴロしていたら、いつの間にか馬が近くにいるよ。

 

空は快晴、綺麗な海、美しい馬、響くオカリナ……。

全てが満たされている。素晴らしき。

残念ながらオカリナは馬に刺さらなかったようだけど、とても良い時間を過ごせた。

 

 

都井岬灯台

都井岬の先っぽには灯台がある。

もう馬で都井岬の一番は体験したと思うが、一応先っぽの灯台には行っておくか。

3km程あったが歩いて行った。

車が僕をどんどん追い抜いていく。

いつものことだが、なんとなくズルされているような気がするよなぁ。

僕が勝手に歩いてるだけなんだけど。

灯台に到着すると、入り口に『記念券交付所』というのがあった。

記念券がもらえるのかと見てみると、300円と書いてある。

じゃあいいか、と歩きだすと、「そこの方!」と呼び止められた。

「見学ですか? 300円になります」

と言われた。

え、それ強制なの?

さっき九州で唯一登れる灯台、なんて書いてあったが、それよりも九州で唯一金を取る灯台だろう。

なぜたかだか灯台を見学するのに金を払わねばならんのか。

灯台はそこに見えている。そこに見えているそれだけだ。

別に博物館や特別な展示があるわけでもない。


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じゃあいいや、と僕は踵を返した。

灯台見学に300円の価値があるとは思わない。

そもぞも、こういう、別に他では金を取っていないことなのに、『ここまで来たから』という気持ちに付け込んで金を払わせるような商売は好きじゃない。

反抗したくなる。

『記念券交付所』という名前も潔くない。

記念券? 欲しくなければ買わなくてもいいみたいじゃないか。

交付? タダで配ってるみたいじゃないか。

チケット販売所だろ、正しくは。

 

みんな思ってるよ。

え、金取んの? って。

でもここまで来たし、300円だし、何もせずに帰るという選択肢はないか。

という気持ちに付け込まれてるんだよみんな。

僕は払わない。

断固として。

300円。

そうですか。じゃあいいです。

 

……こんなんだからケチな奴って言われるんだよなぁ。

 

 

都井岬からは出ないように柵があるものの、都井岬内では馬はどこにでもいる。

糞がどこにでもあるからよくわかる。

道路にもいる。


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乳飲み子だ。結構大きく見えるけど。

車は気をつけないと。

僕は気づかずに後ろから近いて蹴られないように気をつけないと。

 

観光交流センターというのがあって、そこには車が止められるので人が集まる。

ここにも馬がいたのだけど……。

親子の馬の正面に、人が列をなして並び、まるで壁のようになって皆一様にスマホを馬に向けていた。

親子の斜め後ろにも数人、馬に蹴られないようにだけ距離をとってスマホを構えている。

まるで囲んでいるようだ。

というか、囲い込みそのもの。

親馬が怒って前足を地面に叩きつけた。

どん、と音が鳴るが、誰もやめようとしない。

むしろその様子をカメラに収めるのに夢中のようだ。

ひどい光景だった。

 

何なんだこれ?

嫌がってるだろ、なんで誰もやめようとしないの?

大体、こんなふうにされたら馬じゃなくたって嫌に決まってる。

僕だったら耐えられない。

かわいいかわいいとか言うくせに、馬のことをマスコットとしか思っていないのか。

有名な銅像の写真を撮るのと同じ感覚なのだろうか。

信じられない。動物を何だと思ってるんだこいつら。

馬に関する知識とか、そういうレベルの話じゃない。

こんなことされたら誰だって嫌だし何だって恐怖を感じるに決まってる。

なぜ相手を尊重することができないのか。

 

かわいいっていうのは、馬が好きってことじゃないのか。

馬が好きなら、少しくらい馬に配慮するのが普通ではないのか。

ここにいるのは野生の馬だ。

好きに生きている馬だ。

それを見に来ているのだ。

邪魔しないようにとか、思わないのか。

大の大人が揃いも揃って。

こいつら、何なの?

 

というひどい光景を見たのが灯台に行く前で、灯台から戻ってくると、また馬がいたが、今度は人は集まっていない。

子供が駆け出して、その馬の進行方向を妨害するように駆け寄った。

おいおい……大丈夫か?と思ったが、一人だし、身長も低い子供だから、馬もそれほど刺激されないか、と思っていたら、大きな声で『近づきすぎないで!』と声が飛んできた。

そちらを見ると、金剛杖みたいな杖を両手で地面についた男がいた。

何あの棒?

もしかして威嚇するために持ってるのか? 誰を? 

怖……。

どうも都井岬で馬の管理をしていて、馬とのふれあい体験のインストラクターもやっているような立場の人、の一人らしい。

しかしそんな棒を持って威嚇しなくてもいいだろ……と最初は思ったが、さっきのひどい光景を思い出すと、過剰ではないのかもしれない。

普通の思いやりがあれば、そんな威嚇棒はいらないのだけど、ちょっとありえないほど思いやりに欠ける大人と、その行動を見て育った子供がたくさん来るようだから。

この人達も大変だな。

今の子供みたいな行動は、全然理解できるし、優しく注意してやればいいと思うが、さっきの大人たちみたいのが、なんの罪悪感もなしにああいう行動を取り、子供がその態度を真似ると考えると、頭が痛くなる。

説明しなくてもいいようなことを、説明しないといけないのだ。

思いやりを持って接してね、とか、優しくしてあげてね、では、もう通じないのか。

というかそれすらも、言わないとできないのか。

 

 

星空

今日はよく晴れた日で、ここは明かりのほとんど無い丘の上。

となれば、当然期待するのが星空である。

丘の上まで登ってしばらく見ていよう。

 

寝る前、スマホのライトで照らしながら夜の丘を一人で登っていった。

もう駐車場にすら誰もいない。

僕だけだ。

と思ったら、馬はまだ起きていて草をはんでいた。

もう10時になるのに。

 

登り切る前から、チラチラと見える星空はキラキラと輝いていた。

丘のてっぺんまで登って仰向けに寝転がった。

満点の星空が広がる。

真上にはペガスス座

ここは馬の土地だから、今日の主役には相応しい。

残念なことに、次第に雲がかかってきて、曇りのない星の煌めきを眺められた時間は短かった。

それでも、夜の丘にたった一人で登って独占する星空は絶好。

本当に、ここに来て良かった。

都井岬に来て、良かった。

 

 

今日の道

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歩いた距離:28km