歩いて日本一周ブログ

歩いて日本一周する記録とか雑記

WWOOF

wwoof

昨日の朝、数日前に連絡していたwwoofのホストから返事が返ってきた。

来てください、とのことだった。

正直助かった。

 

wwoofとは、有機農家を営むホストの家にゲストが赴き、農作業などの労働力を提供する代わりに寝床と食事をもらうものである。

ゲストは、農業自体に興味がある人と、現地の暮らしを体感したい旅人に大きく別れる。

 

僕は農業と有機農家への興味、歩き旅の休養、電子機器の充電などの利便性、何より楽しそうだという理由で始めた。

しかし、今は円安で日本に来る外国人が多いこともあり、元々wwoof は日本より海外で普及しているので、ホストに対しゲストになりたい人が多い。

そのため以前の2度の申請では空きがないと返答された。

今回も駄目かと思ったが、受け入れてもらえることとなった。

 

昨日、ホストの家まで歩ける距離だったので、朝電話してその日のうちに行くことを了承してもらって、夕方にホストの家に着いた。

ホストは感じの良いお婆さんで、他にwwooferのイスラエル人夫婦が一組。

ベッドのある部屋を一つ貸してもらい、荷物を下ろして一息ついた。

久しぶりに人から作ってもらった夕食はオムライスで、とても美味しかった。

この度の間、テントの中でマットを敷いて寝袋で寝るのが、快適でないと思ったことはない。

けれど、やはりベッドは快適だった。

 

一日目

今日から4日程滞在しようと思う。

ホストさんからはいつまでいてくれても良いという空気が伝わってくるけれど、僕は進まなければならない。

 

ホストさんはレストランをやっているらしく、特に土日は忙しいのだと朝から出ていかれた。

今日僕がやるべきことは、植樹とみずやり、ビニールハウスのカバーかけ、草刈りであった。

イスラエル人夫婦と協力してやる。

 

新鮮だったのは、何でも自分たちで考えて工夫して、あるものでどうにかするというのが、当たり前の雰囲気としてあることだ。

水やりの水は、イスラエル人の旦那さんの方が、用水路を流れる山からの水と畑までをホースでつなぎ、水を引いてきていた。

ビニールハウスのビニールはボロボロで、とてもハウスを覆えそうにないのだが、ホストさんが、足りなかったらブルーシートがあるからそれを適当な大きさに切って、紐でつなげてやって、と言う。

 

銀の匙という漫画でもそうだったし、農家では、これが普通なんだろうな、と思った。

何をやるにしても、こうするのが正解ですよ、と提示されるのが普通だったので、新鮮味を感じた。

まあ都会に住んでいたって、ビニールハウスがボロボロで、穴が出来てしまうなら、別のシートを切ってつなげばいいか、と発想することはできるだろう。

ただ、そういう時には、ちょっと苦労するし、新鮮味を感じて、こんなことがあったんだ、と人に話すような出来事だと思う。

それが当たり前で、特に説明もされず、まあ、これでなんとかしてね、というのは新鮮で面白かった。

 

実際にビニールを被せてハウスに固定していくと、ビニールハウスのビニールはやはりボロボロで大きさが足りず、大きな穴が空いたような状態になった。

まあ、イスラエル人の旦那さんにほとんど任せきりで、僕がやったところは後から彼に修正されるような有り様だったが。

そこでブルーシートがあるのでそれで穴を塞ごう、とホストさんから聴いていた話をすると、彼はそれでは陰ができて日光を遮ってしまうからダメだと言う。

なるほど。言われてみればそうだ。

彼の方が明らかに詳しいし、ホストさんより農作業に詳しそうな勢いなので、僕は頷くしかない。

 

草刈りは、周囲の大事な木や植物を一緒に刈ってしまわないように、草刈り鎌で行なった。

草刈り鎌とは、あんなにザクザク切れるものなのかと驚いた。

 

仕事はほとんど午前中に終わり、後は自由時間となる。

これは思った以上に回復できそうだ。

 

昼食に炒飯を作ると、美味しいと夫婦に喜ばれた。

しかし旦那さんの方が量が多くて食べきれないというので、本当は口に合わなかったのかと心配になる。

話をしていると、彼らには僕より年上の子供が二人もいて、つまり僕の親より年上な訳で、いくら体が僕より大きいと言っても、それじゃああの量は多いよな、と反省した。

僕が残りを食べていると、よく食べる子供のことを思い出したと言って、日本でおみやげに買ったお菓子をいくつか勧めてくる。

ありがたいので全部食べた。

 

 

夕方から餅をつくと聞いていた。

ホストさんの亡くなった旦那さんが凄腕のお菓子職人で、ホストさんもレストランをやり、お菓子も作る。

餅つきの杵と臼ぐらいあるか、と思っていたら、餅つきの機械があった。

自動で餅がつかれ、霧吹きで水が入るのだ。

 

餅がつき終わると機械が止まる。

小さくちぎって丸める。

綺麗に丸めるのにもコツがいり、最初は下手くそだったがやっているうちに上手くなってくる。

次はあんこを入れて丸める。

終わったら、できたてを食べさせてもらえた。

これが抜群に美味いのだ。

でもお腹が膨れて夕ご飯食べられなくなるね、と言われたので、全然いくらでもいけますと返すと、ならもう一個食べていいと言われる。

ここは天国か。

 

 

本当に美味しいもの

夕食。

ちらし寿司、お味噌汁(餅入り)、おから煮、大豆と昆布の煮物、豚肉とニラの炒め物、高菜の漬物、梅干し、サラダ菜。

 

どれも美味しい。

おからは、僕が道の駅によった時、無料で置いてあったもので、無料で食糧が手に入るというだけで反射的に頂いてきたものである。

ホストさんがやっているレストランで、調理してきてくれた。

子供の頃、おからはあまり美味しかった記憶がなかったけれど、とても美味しかった。

 

wwoofのホストをしている人は、ただ農家であるというだけでなく、有機農家である。

100%有機なのか、70%程なのかと程度の差はあるけれど、有機農業を営んでいる。

僕は勝手に、こういう人たちは健康への意識が高く、こうしているのだと思っていた。

 

しかしこのホストさんに限れば、健康だとか体に良いといった言葉はあまり使わない。

美味しいからそうしているのだ。

薬を使わずに、自分で作ったものの方が美味しい。

それを知っているからそうしている、というのが伝わってくる。

 

イスラエル人の奥さんの方は、日本食、特に大豆食品が大好きで、自分で味噌や納豆を作る。

納豆は、既に12回も作っているらしい。

しかし失敗も多く、なかなか難しいらしい。

昨日も納豆作りをすると言ってホストさんと一緒にやっていた。

他人事のように言っているが僕も参加した。

というか、ホストさんは英語が話せないので僕が通訳していた。

 

一番納豆に詳しいイスラエル人が指示を出し、料理が上手で納豆作りにも興味があるホストさんが動き、僕が通訳するという珍妙な三人体制である。

発酵調理の強い味方、ヨーグルトメーカーがあったため、それを使う。

イスラエル人の奥さんによると、これまでヨーグルトメーカーを使ったことはないが、これを使えば簡単にできるだろう、とのこと。

これまではどうやっていたのか。

 

今日の朝には粘り気ある納豆ができていた。

二日ほど冷蔵庫で寝かせると馴染んで美味しくなるらしい。

ホストさんは馴染ませる前に少し食べたらしく、とても美味しいと言っていた。

美味しい大豆で、何も余計なものを入れずに作ってるんだから、美味しいのは当たり前だよね、と言っていた。

 

デザートでアイスクリームを出してくれた。

これも作ったものだ。

亡くなった旦那さん(凄腕のお菓子職人)のレシピである。

溶けそうなぐらい美味い。

 

その後、あまりこういうのは買わないんだけど、と市販のわらび餅を出してくれた。

普通に美味しかったし、イスラエル人夫婦も美味しいと言っていたけれど、ホストさんは食べてすぐに、ああ、これはわらび粉使ってないな、あんまり美味しくない、と言っていた。

 

まあレストランをやっているのだから当たり前かもしれないけれど、味覚が良いのだ。

本当に美味しいものがすぐに分かる。

だから、変なものは入れないで自分で作る、材料から作る、ということをしている。

有機農家と言っても、その理由は一つではないのだ。

 

何にしても夕食が美味しいのは素晴らしい。

しかも、僕以外の三人は、どちらかといえば、こんなに多くなくていいよ、と食事の量が少なめのほうがいい人たちであり、必然、僕が一番多く食べられる。

しかも、4人分よそって余ったもの、ホストさんがもう片してほしいものは、すべて僕のところに来る。

お腹いっぱい幸せいっぱいである。

 

イスラエル人夫婦が明日出ていく。

彼らが市販のお茶を買うというので、ホストさんがそんなのより美味しいお茶を持たせる、と言って米が入っていそうな紙の袋を持ってきた。

僕がこれから歩く、大歩危の辺り、山の上で採れたお茶らしい。

僕もお茶パックと共にもらった。

きっと美味しいことだろう。

 

 

wwoof一日目感想

色んなホストさんがいるだろうけれど、少なくともここはとても良いところだし、ホストさんはとても良い人だ。 

 

面白いのは、一人でアメリカに行った時も、研究でマダガスカルに行った時も、英語が話せなくて苦労した僕が、通訳なんかをしていることだ。

英語のレベルが上がったわけではない。

事実、聞き取れないこともよくある。

けれど、周りが自分より英語のできる人しかいない環境と違い、英語が分かる人として頼られてみると、なんだ、意外と僕も話せるじゃないか、という気になってきて気分が良い。

事実、日常会話ぐらいなら困らないのだと、初めて気づいた。

 

脚が完全に休息モードに入っている。

休息モードに入ると、脚が痛い。

活動モードでは抑え込んでいた痛みがやってくるのだ。

しかしようやく、この滞在でこれまでの脚へ溜まった疲労を全回復できそうだ。

 

一日休んだくらいで脚は完全には回復しない。

しかしそれである程度は回復する。

そしてある程度疲労を溜めたままさらなる疲労を蓄積させる。

これをリセットできるのは大きい。

 

食べ物が美味しく、栄養も摂れている。

生活が文化的だ。

毎日の風呂、柔らかくて清潔なベッド。

 

旅の合間、定期的にwwoof を挟めたら、とても良いかもしれない。

 

 

歩いた距離:0km