歩いて日本一周ブログ

歩いて日本一周する記録とか雑記

四日目

大雨

今日は1日中雨の予報だった。

カッパを着れば草刈りぐらいできるかと思ったが、風邪を引くといけないからとホストさんが今日の仕事を少なくしてくれた。

家に掃除機をかけること、ビニールハウス内でトマトのための支柱を設置すること、タイヤからホイールを外すこと。

 

雨が弱まった時にやって、午後は休んでいればいいと言って、ホストさんは出かけていった。

しかし雨は朝からどしゃ降りで、弱まる気配など一向にない。

それどころか予報では昼に近づくにつれて雨は強くなる。

 

掃除機かけはさっさと終わらせ、支柱の設置を始めた。

ビニールハウス内に雨は入らないが、カッパを着たにも関わらず、移動だけでずぶ濡れになった。

 

その後、バールを使ってタイヤからホイールを外す作業を始める。

屋根の下でやるが、移動でぐしょぐしょに濡れているのでもはやあまり関係ない。

タイヤは思いの外硬く、どれだけやっても外れる気がしない。

 

一度戻ってネットで外し方を調べると、思っていたよりずっと面倒な作業のようだ。

タイヤ外しのための大きめの専用器具があれば簡単に外せそうだが、それを使わない場合、小さな専用器具、2本のマイナスドライバーの先がヘラになっているようなものを使って、時間をかけてやる方法が主流らしい。

 

さらに調べると、車に常備している、タイヤ交換のために車体を持ち上げるあの道具と、側溝を利用して比較的簡単に外せる方法があった。

これなら僕でも新しい道具を買わずにできそうだった。

しかし、どしゃ降りの雨の中ではできないし、僕は明日の朝出発するので、これはできない。

今日の仕事はここまでのようだ。

 

 

休憩

仕事の後は、釣り動画や料理動画を見て過ごした。

 

明日からまた歩く日々が始まる。

4日あれば脚は完全回復すると思ったが、今朝の時点では足裏やふくらはぎにはまだ痛みが残っていた。

まあ、ほとんど回復したと考えてもいいレベルだ。

 

一つ上手くいかなかったことは、洗濯物が溜まっており、着る服がほとんどない状態で出発しなければならないことだ。

人の家なら洗濯機が使えるから、服は全て綺麗に洗った状態で出発できると考えていた。

しかし昨日今日と雨続きで、洗っても干せない。

汗と雨で服はほとんど使い切ったため、着れるものがない。

これは残念なことだった。

まあ、明日の朝洗濯だけさせてもらって、近くのコインランドリーで乾燥させればいいだろう。

 

スマホとモバイルバッテリーはフル充電させられたし、地図のダウンロードもできた。

 

これから、徳島県の旅が本格開始する。

ここからは結構ハードである。

まず、吉野川沿いに西に歩き、さらに南に歩くと、小歩危大歩危というカヌーの難所がある。

歩きなので難所ではないが、景色は良いだろう。

この辺りは既に山奥だ。

さらに東に歩いていき、高知県最高峰三嶺(1892m)、徳島県最高峰剣山(1955m)を縦走する。

さらに東に歩き、那賀川沿いに東に降りていく。

 

何が問題かと言えば、この大歩危から東海岸まで、ほとんど徳島県を横断する間に、ずっと山奥の地を歩かねばならないのだ。

普通、剣山や三嶺などの街から遠く離れた山に行く登山者は、車やバスで登山口近くまで来て目的の山だけ登り、降りてきたら車やバスに乗って家に帰る。

 

しかし僕は全部歩きなので、それができない。

結果、通常ではありえないルートを歩くことになる。

何が問題か。

山奥すぎて、店がないことだ。

大歩危から三嶺までもほとんど店はなく、剣山からもずーっと何も無い。

これに気づいた時、僕は徳島県が想像を遥かに超える田舎であることを知った。

 

グーグルマップで調べると、一応国道沿いにいくつか小さな集落はある。

しかしその辺りを利用する外部者などほとんどいないと見え、店もほとんどない。

個人商店がいくつか表示されるが、やっているかどうか怪しいし、マップ上で店名をタップして出てくるたった一枚の写真は、よくわからない道路の写真であったり、店の名前などどこにもない普通の家の引き戸が写されていたりする。

唯一確実に食糧が手に入ると期待できるのが剣山山頂の山小屋という有り様である。

もちろん、山小屋で米など売っているはずがなく、カロリーメイトやエネルギーバーが関の山だろう。

 

僕は奈良市の西側出身だ。

当然、都会ではない。

土地の安さに任せて、TSUTAYAユニクロ、アウトレット、ブックオフなどが大きめの敷地で大通りにどどどんと並び、イオンモールが幅を利かせる、地方によく見られる街並みで育った。

こういう、都会ではないけどすごい田舎というわけでもない割と便利な街は、どの都道府県に行ってもそこら中にあるものだと思っていた。

しかし、徳島県でこれがあるのは吉野川河口の徳島市だけである。

徳島県北部を西から東に流れる吉野川中流下流域には、田畑と住宅地が交互に現れる街並みが広がっており、道の駅、スーパー、コンビニはある。

あとは全部山奥である。

残りの徳島県は全部山奥。

スーパーはおろかコンビニもない。

 

道の駅大歩危、そこからすぐそばの道の駅にしいやが、最後の食糧補給ポイント。

そこからずっと、海岸近くまで道の駅もない。

何kmあるかなど数えたくもない。

いや、実をいうともっと楽なルートはある。

剣山を登った後、北側、吉野川の方に降りれば比較的すぐに街に出られる。

しかし、吉野川はもう歩いた。徳島市ももう見た。

徳島県が山の県なら、歩くべきは山の中である。

 

食糧はもちろん多めに積んでいく。

しかし、やっているか分からない個人商店がやっていなければ、食糧はたぶん足りない。

いや、分からない。

所詮グーグルマップで眺めただけであるし、行ってみれば案外何かあるかもしれない。

しかし何もなければ、もう知らない人の家の戸をたたき、食糧を恵んでもらうしかない。

 

幸い、歩くルートは人が住んでいる。

死ぬことはない。

ならばもう歩くだけだ。

案ずるより産むが易し。

なるようになる。

大抵のことは、やってみればどうにかなる。

 

しかし贅沢を言うのなら、食糧がなくなった場合、最初に戸を叩く家の人が、優しい人であればいいなと思う。

 

 

最終日

明日の朝この家を出るので、実質今日は最終日である。

夕食に、香川県の特産であるという、そら豆を砂糖、醤油で味付けたものが出た。

これが美味しい。

ホストさんは名前も忘れていたが、調べてみると『しょうゆ豆』というらしい。

そら豆を焼いてから、砂糖、しょうゆに漬け込んで作るそうだ。

 

鶏肉に塩こしょう、にんにくをすり込んで、片栗粉をまぶして焼いただけのもの、さつまいもの芋粥、シンプルな料理が美味しい。

この家では、朝は毎日、蒸し野菜とゆで卵が出る。

ベーコンやソーセージを一緒に蒸すこともある。

そこに岩塩を振って食べる。

 

料理本をたくさん書いている有元葉子さんやウー・ウェンさんなども、家庭料理はこういうシンプルで手間のかからない物が美味しくて良いのだと言っていたことを思い出した。

 

ホストさんが見ていないところで僕に甘えてくる猫は、ホストさんが一人の時にはよく甘えてくるという。

自分が甘えている所をその人以外に見られたくないだけで、甘え好きの猫だったのだ。

あるいはそうすることで、人に、自分にだけ甘えてくる、と思わせようとしているのか。

そうだとしたらなかなかの悪女っぷりである。

確かメスだったはずだし。

 

もう4日も歩いていないので、体がうずうずしている。

僕の脚が、歩かせろと言っている。

まあ待て。明日になれば存分に歩ける。

4日ぶりに歩くと、荷物は重く感じるだろうか。

それとも疲れが取れて軽く感じるだろうか。

 

明日はコインランドリーで洗濯して、スーパーで食糧を買い込み、可能なら大歩危まで行こう。

 

 

歩いた距離:0km